2019/4/28

高精度プレートに求められる耐食性

  1. 1.高精度なプレートに採用される材質(素材)

    ダイキョー精機株式会社が手掛けるような、平面・平行度や直角度などの幾何公差を求められる、産業機器用のプレート加工品のほとんどは、プレート加工における精度が求められ、マシニング加工(切削加工)だけではなく研磨が必要とされます。このようなプレートは「加工性」および「強度」という側面から、S50Cなどが多用されます。

    同じ鉄系の素材の代表格としてSS400がありますが、このSS400を使わないのは、素材自体に様々なものが混じっており鋼材の製造工程において巣(穴のようなもの)が発生する場合があるので、精度が求められるプレートには適さないと考えられているためです。

    加工性および強度の面においてS50Cが採用されるケースが多いのですが、S50Cは鉄ですので加工したままで使うとどうしても錆びが発生してしまいます。プレートが使用される環境では、錆びず・変形せず、耐久性があり、長期間にわたっての使用に耐えることが必要となりますので、加工性・強度の高いS50Cを使用環境に耐えうるものにするためには、錆びを防止する表面処理が必須となってきます。

  2. 2.プレートの耐食性を高める用途で用いられる、低温黒クローム処理

    そこでプレートの防錆処理としてよく用いられるのが、低温黒クローム処理と呼ばれる表面処理方法です。特徴としては、下記を上げることができます。

    1. 黒い

      一般的には黒染め・黒クロメートがありますが、これらの表面処理はすぐ剥がれ、耐食性が低いということが挙げられますまた、黒クロメート処理は柔らかいという欠点があり、産業機器などで用いられる高精度プレートには適しません。

    2. 耐食性が高く、耐摩耗性がある

      低温黒クローム処理は母材と一体化した合金層を形成しますので、剥がれないのが最大の特徴です。先に挙げた黒染めや黒クロメート処理は剥がれてしまいますので、この点は大きく異なります。

    3. 膜厚が均一に形成される

      ダイキョー精機株式会社が扱うような高精度プレート加工品は、ミクロン単位で加工精度を追い込んでいます。そのため、例えば表面処理の膜厚管理が一定でなく管理できないとなると大きな問題になってしまいます。その点、この低温黒クローム処理は膜厚が均一になることが特徴で、おおよび1~3μmとなります。これはただ塗るのではなく合金層を形成するという側面が理由とも言われています。

    4. 光を反射しない

      産業機器の内部は黒に塗られているケースが多いですが、例えば黒ニッケルメッキであればギラギラしてしまいますが、この低温黒クローム処理はどちらかと言うとマットな印象で、ギラギラ感はありません。

このように、低温黒クローム処理は、過酷な環境で長期間にわたって性能を発揮することが必要なプレートには最適な処理と言えます。

通常のメッキや表面処理では被膜を「乗せる」ので剥がれこともあるが、先ほど説明したようにこの低温黒クローム処理の場合は母材と一体化した被膜(合金層)を形成するので、摩耗したり強引にキズをつけるようなことがない限りは、半永久的に剥がれることはありません。

なおこの低温黒クローム処理は一般名称であり、ほかの呼び方としてAP-Cやレイデント(レイデント工業の登録商標)と呼ばれることがあります。

ところで、S50Cは鉄であり耐久性もありますがその反面重いというデメリットもあります。この重さという課題を解決するためにプレート加工品の素材をアルミにするというケースがありますが、その場合は強度よりも重量を軽くしたいというニーズがあるためです。アルミそのものが錆びてどうしようもないということはありませんが、アルミで気を付けなければならないのは電蝕の方であり、この電蝕を押さえて耐食性を向上させるため、白アルマイト・黒アルマイト・硬質アルマイトなどが採用されています。

なお、非常に大きいプレートになると、通常であればメッキ槽の制約があり、無電解ニッケルメッキを施す場合が多くあります。しかし、ダイキョー精機株式会社を運営するダイキョー精機の協力工場であれば、低温黒クローム処理でも1m以上のワークサイズでも対応が可能となっています。

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